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東京高等裁判所 昭和36年(く)127号 決定 1961年12月25日

少年 S(昭一七・三・三一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は附添人弁護士棚村重信作成名義の抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は、少年は昭和三十六年十一月十四日新潟家庭裁判所長岡支部に於て特別少年院送致決定を受けたが、本件二回の非行事実は他と共に友人○間○一及びバーテン○田○治に対し暴行を働いたと云う日常茶飯事の事柄で、事案軽微であり、要保護の基礎となつた第一の少年の智能性格も通常の少年と異るところはない。第二の従前の非行歴も取締官の意見よりも少年保護司の意見を尊重すべきで在宅保護が相当である。少年を少年院に収容することは少年院が事実上不良少年の集団場であつて、教育的効果が薄い。親権者父の意見どおり寧ろ少年を親権者の愛情による善導に一任するこそ少年を更生せしむる所以であるから、少年を特別少年院に送致した原決定を取消し、軽い保護処分を求めるため、本件抗告に及んだと云うに在る。

よつて案ずるに、本件少年保護事件記録、少年調査記録を調査し、これ等に現われた本件少年の非行事実と少年の年齢、性格、生育歴、家庭の事情、生活環境等諸般の事情を綜合勘案するに、本件非行事実は原決定が摘示のように少年は毎夜新潟県○○市内の盛場を徘徊する不良グループの兄貴分なるところ、(一)他二名と共同して友人○間○一を夜間△△神社境内に連れ出して暴行を加え、自らも革バンドを以て同人の頭部顔面を数回殴打し、(二)他一名と共同してバーテン○田○治を夜間○○神社境内に連れ出して暴行を加え、自らも下駄ばきのまま同人の顔面を一回蹴り上げたものであつて、必ずしも所論のように事案軽微であるとは云えない。而も右非行を犯すまで少年は暴行傷害罪等により数回検挙され、うち三回は罰金に処せられ、現に保護観察中であるのに拘らず、依然改悛することなく本件非行に及んだもので、少年の智能は低くその性格も著しい偏奇を持ち異常に近い程度で、親権者も保護の熱意に欠くるところある等の事情が認められるから、この際少年を少年院に収容し紀律ある集団生活をなさしめ生活の訓練及び性格の矯正をなし、少年の更生をなさしめるを相当とするを以て、少年を特別少年院に送致した原決定は抗告人主張のように著しく不当の処分であるとは思われない。従つて本件抗告は理由がないものと云わなければならない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三十三条第一項少年審判規則第五十条によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 鈴木良一)

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